研究室としてのこれまでの活動実績はありませんが、XAFS法を主とした放射光計測に関する研究と、物質科学への応用が中心的な課題になります。以下の文章は当研究室に参加することを考えている学生の方々を主対象に想定しています。
XAFSの基礎
XAFSって何? 、それで間違いなく測定できるの?、どんなクオリティーのデータだとどこまで議論できるの? … 等々、XAFSという現象とその測定方法にまつわる疑問はXAFSに限らず先端的な計測を行っていると色々出てきます。こうした素朴な疑問一つ一つに対する答を丁寧に探すことは地味ですが大事なことです。答を探した結果、既に知られている答が出てきたら、良い勉強ができたことになります。誰も答えていない疑問だとわかればそれは大事な研究です。
XAFSとは何か、放射光を使った計測で何がわかるのか、まずは勉強することが研究のスタート地点です。
XAFS(計測)の発展
今は無い計測を実現する、今ある計測をより良く行う方法を探す、等XAFS計測の発展を目指した研究も大事です。直近では2次元、3次元の計測をより充実させることを目指しています。可能性は沢山ありますが、幾つか例を挙げてみます。
- 2次元のXAFS測定をより身近で利用しやすいものにする
例えば電池の電極のように、膜状で使われる物質はたくさんあります。その面内にムラがあるような状況は容易に想像できますが、2次元の測定が可能になれば分布を含めた全体像を一度に測定できます。 - 3次元のXAFS測定にかかる時間をより短くする
もう一つ次元を上げて3次元の測定になると、体積の内部の状態まで「視る」ことができます。この様な測定にかかる時間を短くし、身近なものにできれば、粒界を持つ材料や、接合面を持つ材料の研究、材料内での組成ゆらぎなどを対象にした研究など様々な応用が考えられます。 - 3次元のXAFS測定結果を人間に理解できる形で提示する
3次元の測定を行って内部の状態を「視る」ことができる時、得られた結果を理解可能な形で人間に提示するのは大変です。例えば金属の中に2種類の繊維が絡み合ったような試料があった時、その「絡まり方」の違いを表現する、あるいは人に説明するのが大変なことは容易に想像できます。
この苦労を乗り越えてより良く人に伝える表現ができれば3次元の測定の重要性はいっそう高まります。 - 試料の変化をリアルタイムで追えるような高速の2次元、3次元測定を実現する
2次元、3次元の測定時間を限り無く短くして、物質の状態変化を追える様になれば夢が広がります。上に上げた例でも、膜のムラが外部の刺激で変化していく様子や、加熱などで界面の状態が時間と共に変わっていく様子などの観察を目指します。 - データサイエンスと結びついて今までにない情報を提示できる可能性を探る
「3. 人間に理解できる形で提示する」ことが課題になるのは、2次元、3次元のデータ量があまりに多すぎるからです。一方でそれは処理されるべき多量の情報がそこにあることを意味します。そんなビッグデータの中に隠れている予想していなかった結果を提示できる可能性を追求します。
2次元、3次元XAFSの実例
最後に、この様な発展的な測定の重要性や面白さを示すために、いま現在できていることの例として、2次元、3次元のXAFS測定の例を挙げます。