2次元/3次元XAFS測定の例

広がった光と、2次元のX線検出器(X線カメラ)を使うと2次元でのXAFS測定を比較的短い時間で行うことができます。
図1は、2種類の酸化銅(CuOとCu2O)を混合して作ったペレットのX線透過像です(ツナギとしてBNも混ざってます)。 このようにして得られる像は、物質の密度が高い部分(おそらく酸化銅がある部分)はわかっても、それがどんな物質なのかはわかりません(構成元素は ? 酸化数は ?)。 ですが、図1の様な写真を、X線のエネルギーを変えながら繰り返し撮影すると、写真の上の各点に対応したXAFSスペクトルを得ることができます。

図1. 錠剤状の試料のX線透過像。密度の高い物質がある部分が影になって観察される。

各点のXAFSスペクトルが得られれば、各点にある元素は何か、それがどんな化学状態にあるのかがわかります。 この様に図1の各点がを解析した結果が図2と図3です。 図1に見える影の一つ一つが違った価数の銅化合物の塊だったことがわかります。例えば、右の方にある比較的大きな塊は図3にだけ現れるので恐らく 2価の銅化合物(CuO) です。また左上方にある丸い塊は図2にだけ現れるので、恐らく1価の銅化合物(Cu2O)です。中心少し左にあるオタマジャクシのような形の塊は芯が CuO で、周りに Cu2O がまぶされているように見えます。

図2 解析の結果1価の銅(Cu2O)があるとわかった場所が白く表示されている。図1の一部の粒子が Cu2O だったとわかる。
図3 解析の結果2価の銅(CuO)があるとわかった場所。

その他の粒も同様にどちらの物質でできているか判別できます。この様に、元素の状態を区別した解析が行えるのはがXAFS法の大きな特徴ですが、この例のように2次元的に測定できるとその重要性が増します。図1〜3の例では、X線のエネルギーを変えて、左端の様な写真撮影を繰り返すことで2次元のXAFSスペクトルを得、それを解析することで Cu2O と CuO の2次元的な分布を知ることができました。 この様な測定を更に拡張して、試料の角度を変えて左端の写真撮影を繰り返すと3次元の透過像(X線CT像)を得ることができます。 すなわち 3次元の XAFS測定/解析が可能になります。