ちょっとXAFS測定してみた

夢の中の実験日記…

◯年◯月20日
天啓をうけて、一円玉と十円玉を一緒にお酢に浸けてみた。
なぜかわからないが一円玉の色が変わっているような気がする。なぜかわからないのでこのまま一晩放置してみる(右)。机の上にお酢がこぼれたら大変なので「さわるなきけん」の表示は大事です。

◯年◯月21日
一晩経ったら一円玉はっきり茶色くなっていた。
なんで色が付いたのか是非知りたいので調べてみるために試料ホルダーに固定(下左)。
そして、「そこにあるモノ(の構成元素)は何?」、ということならまずは蛍光X線分析。試料にX線を当てた時、試料から2次的に出てくる蛍光X線のエネルギーは元素ごとに決まっているので調べると何があるのかわかるはず。

するとなんと、一円玉ならアルミニウム製のはずなのに、何故か Cu (銅)の蛍光X線が強いです(上右)。(Al の蛍光X線がほとんど見えないのは、エネルギーが低すぎて大気中を透過してきてくれないからかな。)
「コノ銅ハドコカラキタンダロー?」。
でも、一円玉の表面にゴミみたいに Cu (銅)のカケラが載ってるだけかも。 そんな疑念が湧いてきたので Cu (銅)の蛍光X線だけを検出するようにしてスキャンしてみる(右)。

白く見えるところが Cu (銅)が多いところ。上の一円玉の写真でも縁の一段高くなっているところがはっきり茶色になっているけど、右の写真でも縁にはぐるっと一周 Cu (銅) がある。
やっぱりこの茶色はまず間違いなく Cu (銅) ですね。
「コノ銅ハドコカラキタンダロー?」。

ここまでだと「ちょっと蛍光X線分析してみた」なので、最後に茶色の濃いところでXAFSスペクトルを測定してみる。といってもちょこっと狭い範囲だけにしておいて、XANES 領域と呼ばれる Cu-K 吸収端の近傍だけの測定をやってみる。(時間の節約になってるわけでもないのですが、全体像を見て詳しく議論するつもりがなかったので…)
一円玉を測った青色の線に重ねて、金属銅、酸化銅 (Cu2O, CuO) のスペクトルを描いてみたのが下の図。まずもって、ここに「吸収端」(段差) が現れるので一円玉の茶色が Cu (銅) なのは改めて確定。
そして、その曲線が似ているのは… オワカリイタダケルダロウカ、金属銅にほぼ一致。ほとんど錆びてもいない新鮮な Cu (銅) だということになりますね。ということで、元々ずっとあった Cu (銅) ではなくてつい最近(きっと昨日の晩じゃないかという気がする…)付いたものかな。
「コノ銅ハドコカラキタンダロー?」。

それはそれとして、金属銅と一酸化銅、二酸化銅のスペクトルがこんなに違うというのもXAFSの面白いところです。他の方法だと元素の有無や長距離秩序構造(結晶構造)は分かっても、その化学状態や短距離秩序構造(局所的な形)が分かる方法は珍しいのです。

測定中にその場で確認したスペクトル
結論の図はさすがに、画面写真だけでは寂しいので、改めてプロットし直してみました。青が一円玉。赤がそれと似ていると判断した Cu のスペクトルです。厳密には違っているので多少は酸化しているはず。実はその割合も解析するとすぐ出せます。