tabuchi:mlcf法の紹介
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tabuchi:mlcf法の紹介 [2020/04/13 08:18] – [MLCF での解析] mtab | tabuchi:mlcf法の紹介 [2023/11/24 03:17] (現在) – [1.2 MLCF での解析] mtab | ||
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資料1 : {{: | 資料1 : {{: | ||
- | プログラム : [[: | + | プログラム : [[: |
+ | 実際的な注意点 : [[tabuchi: | ||
XANES領域のXAFSスペクトルを解析する際、よく使われる方法の一つに | XANES領域のXAFSスペクトルを解析する際、よく使われる方法の一つに | ||
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面内の吸光度分布を測定し、次のエネルギー点に移るということを繰り返すなら、10秒/ | 面内の吸光度分布を測定し、次のエネルギー点に移るということを繰り返すなら、10秒/ | ||
+ | ===== - MLCF法の概要 ===== | ||
- | 資料 1. は、MLCFの基礎となる理論と実施例を2018年にポーランドで開催された XAFS国際会議(XAFS2018)にて報告した際のポスターである。理論に関しては、上記のポスターでも不足なく述べられているが、それほど詳細な記述にはなっていない。近々この場所でも少し丁寧な紹介を試みる予定である。 | ||
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- | ===== MLCF法の概要 ===== | ||
MLCFと通常のLCFのもっとも大きな違いは、LCFでは解析に使うリファレンスとなるスペクトル、解析対象のスペクトル共に予めエッジジャンプが1で、ベースラインがフラットになるように規格化されているのに対して、MLCFでは解析対象のスペクトルは規格化されていないものを扱うことである。このため、MLCF ではエネルギー方向の測定点数が少なく事前には規格化ができないようなデータも扱うことができる。 | MLCFと通常のLCFのもっとも大きな違いは、LCFでは解析に使うリファレンスとなるスペクトル、解析対象のスペクトル共に予めエッジジャンプが1で、ベースラインがフラットになるように規格化されているのに対して、MLCFでは解析対象のスペクトルは規格化されていないものを扱うことである。このため、MLCF ではエネルギー方向の測定点数が少なく事前には規格化ができないようなデータも扱うことができる。 | ||
- | + | <WRAP center 90%> | |
- | ^ 手法 | + | ^ 手法 |
- | | LCF | 規格化 | + | | LCF |
- | | MLCF | 規格化 | + | | MLCF | 規格化 |
+ | </ | ||
MLCFでは、測定対象スペクトルをあらかじめ規格化しないが、規格化しないままで標準スペクトルとの比較を行うわけではなく、 | MLCFでは、測定対象スペクトルをあらかじめ規格化しないが、規格化しないままで標準スペクトルとの比較を行うわけではなく、 | ||
規格化の為に必要な情報を得ることも解析のプロセスの一部に取り込んでいる。 | 規格化の為に必要な情報を得ることも解析のプロセスの一部に取り込んでいる。 | ||
- | ==== LCFでの解析 ==== | + | ==== - LCFでの解析 ==== |
(規格化された)標準試料のスペクトルをSi(E) (i=1,2,3,…: 標準試料の指標)とし、 | (規格化された)標準試料のスペクトルをSi(E) (i=1,2,3,…: 標準試料の指標)とし、 | ||
規格化された対象試料のスペクトルを¯μt(Ek) (k=1,2,3,…: 測定したエネルギー点の指標)とする | 規格化された対象試料のスペクトルを¯μt(Ek) (k=1,2,3,…: 測定したエネルギー点の指標)とする | ||
行 40: | 行 41: | ||
対象試料中の対象元素の状態は、標準試料中の対象元素の状態のどれかになっているものと考えられる場合 LCF 解析が可能になる。 | 対象試料中の対象元素の状態は、標準試料中の対象元素の状態のどれかになっているものと考えられる場合 LCF 解析が可能になる。 | ||
状態iの存在割合をαiとして、標準的な最小二乗法を使うことにすると | 状態iの存在割合をαiとして、標準的な最小二乗法を使うことにすると | ||
- | + | \[ | |
- | $ R = [ \Sigma_k \{ \overline{\mu t}(E_k) - \Sigma_i \alpha_i S_i(E_k) \} ]^2 $ | + | R = | \Sigma_k \{ \overline{\mu t}(E_k) - \Sigma_i \alpha_i S_i(E_k) \} |^2 |
+ | \] | ||
を最小にするαiを見つける問題に落ち着き、これは簡単に解くことができる。 | を最小にするαiを見つける問題に落ち着き、これは簡単に解くことができる。 | ||
- | ==== MLCF での解析 ==== | + | ==== - MLCF での解析 ==== |
上記の LCF の解析では、対象試料のスペクトルが事前に規格化されていることを前提にした。 | 上記の LCF の解析では、対象試料のスペクトルが事前に規格化されていることを前提にした。 | ||
規格化の手続きは | 規格化の手続きは | ||
行 54: | 行 56: | ||
μt0 を μt0(E)=C0+C1E や μt0(E)=C0+C1E−3+C2E−4 の様にパラメータを用いて近似するなら、そのパラメータも最小二乗の対象にしてαiと同時に決定することができる。 | μt0 を μt0(E)=C0+C1E や μt0(E)=C0+C1E−3+C2E−4 の様にパラメータを用いて近似するなら、そのパラメータも最小二乗の対象にしてαiと同時に決定することができる。 | ||
これが MLCF の考え方である。 | これが MLCF の考え方である。 | ||
- | $\mu t0として\mu t_0(E) = C_0 + C_1 E$を採用した場合を具体的に書いてみる。 | + | $\mu t_0として\mu t_0(E) = C_0 + C_1 E$を採用した場合を具体的に書いてみる。 |
\[ | \[ | ||
行 60: | 行 62: | ||
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の ¯μt を | の ¯μt を | ||
- | $\overline{\mu t}(E) = \frac{\mu t(E)-\mu t_0(E)}{\Delta\mu t} = \frac{\mu t(E)-C_0-C_1 E}{\Delta\mu t}$ | + | \[ |
+ | | ||
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と置き換えると、 | と置き換えると、 | ||
\[ | \[ | ||
R = | \Sigma_k \{ \frac{\mu t(E)-C_0-C_1 E}{\Delta\mu t} - \Sigma_i \alpha_i S_i(E_k) \} |^2 | R = | \Sigma_k \{ \frac{\mu t(E)-C_0-C_1 E}{\Delta\mu t} - \Sigma_i \alpha_i S_i(E_k) \} |^2 | ||
\] | \] | ||
- | と書ける。Δμt>0なので、RΔμt=R′ と書くことにすると、 | + | と書ける。RΔμt=R′ と書くことにすると、 |
\[ | \[ | ||
R' = | \Sigma_k \{ \mu t(E)-C_0-C_1 E - \Sigma_i \alpha_i \Delta\mu t S_i(E_k) \} |^2 | R' = | \Sigma_k \{ \mu t(E)-C_0-C_1 E - \Sigma_i \alpha_i \Delta\mu t S_i(E_k) \} |^2 | ||
\] | \] | ||
- | の R′を最小にすることとRを最小にすることは等価である。 | + | Δμt>0なので、 |
+ | R′を最小にすることとRを最小にすることは等価である。 | ||
さらに、表記を簡単にするために αiΔμt=α′iと書くことにすると、 | さらに、表記を簡単にするために αiΔμt=α′iと書くことにすると、 | ||
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+ | 当 web ページとその下のページに関するお問い合わせ等ございましたら、[[連絡先|連絡先]]にご連絡をお願いします。 \\ | ||
+ | [[start|田渕のページのルート]] | ||
tabuchi/mlcf法の紹介.1586765926.txt.gz · 最終更新: 2020/04/13 08:18 by mtab