tabuchi:dead-time-correction
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tabuchi:dead-time-correction [2022/11/01 08:38] – [1.2 一般的な数え落とし補正] mtab | tabuchi:dead-time-correction [2023/09/11 07:19] (現在) – mtab | ||
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行 40: | 行 40: | ||
装置に流れ込んでくるパルスがこの不感時間に当たってしまう確率は | 装置に流れ込んでくるパルスがこの不感時間に当たってしまう確率は | ||
+ | ((実際にはこの式が既に近似。パルスレートが$Nin$)) | ||
\[ | \[ | ||
| | ||
行 77: | 行 78: | ||
$n_{\rm out}$ は、計測器が出力として出すパルス数そのもので、 | $n_{\rm out}$ は、計測器が出力として出すパルス数そのもので、 | ||
例えば慣例的に $\rm SCA$, $\rm OCR$ などと呼ばれる数字などである | 例えば慣例的に $\rm SCA$, $\rm OCR$ などと呼ばれる数字などである | ||
- | ((本来 | + | (($\rm OCR$は output count rate の略。一方 |
数え落とし補正が必要になる出力値が $\rm SCA$ と呼ばれてしまうことがままある。))。 | 数え落とし補正が必要になる出力値が $\rm SCA$ と呼ばれてしまうことがままある。))。 | ||
$N_{\rm in}$ は装置に流れ込む全パルス数で、例えば $\rm ICR$(input count rate)などと呼ばれる数字がこれに当たる。 | $N_{\rm in}$ は装置に流れ込む全パルス数で、例えば $\rm ICR$(input count rate)などと呼ばれる数字がこれに当たる。 | ||
行 112: | 行 113: | ||
| | | | ||
- | ^ 全信号 | + | ^ 全信号 |
^ 着目値 | ^ 着目値 | ||
行 118: | 行 119: | ||
| | | | ||
- | ^ 全信号 | + | ^ 全信号 |
^ 着目値 | ^ 着目値 | ||
行 125: | 行 126: | ||
ここまでで出てきた $(1-N_{\rm T}\tau_0)$ や $(1-N_{\rm in}\tau)$ などの因子は、 | ここまでで出てきた $(1-N_{\rm T}\tau_0)$ や $(1-N_{\rm in}\tau)$ などの因子は、 | ||
- | 真のイベント数、中間状態(パルス計測系に入る前)のパルス数、最終的な計測値を結ぶ係数になっている。 | + | 真のイベント数、中間状態(パルス計測系に入る前)のパルス数、最終的な計測値という3つの量を結ぶ係数になっている。 |
すなわち、 | すなわち、 | ||
- | ${\rm T} \Rightarrow {\rm in}$ のプロセスでカウントされる確率が $p_{\rm in}^{\rm T} = 1-N_{\rm T}\tau_0$ であり、 | + | 「${\rm T} \Rightarrow {\rm in}$」のプロセスでカウントされる確率が $p_{\rm in}^{\rm T} = 1-N_{\rm T}\tau_0$ であり、 |
- | ${\rm in} \Rightarrow {\rm out}$ のプロセスでカウントされる確率が $p_{\rm out}^{\rm in} = 1-N_{\rm in}\tau$ である。 | + | 「${\rm in} \Rightarrow {\rm out}$」のプロセスでカウントされる確率が $p_{\rm out}^{\rm in} = 1-N_{\rm in}\tau$ である。 |
+ | |||
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+ | |||
+ | |||
+ | | | ||
+ | ^ 全信号 | ||
+ | ^ 着目値 | ||
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従って、全事象の数 $N$ ではなく、特定のエネルギーでの蛍光等、全体の一部分に相当する事象に関する計測値 $n$ は、 | 従って、全事象の数 $N$ ではなく、特定のエネルギーでの蛍光等、全体の一部分に相当する事象に関する計測値 $n$ は、 | ||
行 139: | 行 150: | ||
の様に計算できる。 | の様に計算できる。 | ||
- | + | ここで、$N_{\rm in}$ と $N_{\rm T}$ の2つが出てきているが、$N_{\rm in} = p_{\rm in}^{\rm T} N_{\rm T} = ( 1 - N_{\rm T} \tau_0 ) N_{\rm T}$ を使って | |
- | | | + | |
- | ^ 全信号 | + | |
- | ^ 着目値 | + | |
- | + | ||
- | + | ||
- | ここで、$N_{\rm in}$ と $N_{\rm T}$ の2つが出てきているが、$N_{\rm in} = p_{\rm in}^{\rm T} N_{\rm T} = ( 1 - N_{\rm T} \tau_0 ) N_{\rm T}$ を使って消去することができて | + | |
\begin{eqnarray} | \begin{eqnarray} | ||
n_{\rm out} & = & ( 1-N_{\rm T}\tau_0 ) ( 1-N_{\rm in}\tau ) n_{\rm T} \\ | n_{\rm out} & = & ( 1-N_{\rm T}\tau_0 ) ( 1-N_{\rm in}\tau ) n_{\rm T} \\ | ||
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\] </ | \] </ | ||
ということになる(($N_{\rm T}\tau$、$N_{\rm T}\tau_0$ 等の $N$と$\tau$の類の積は $1$ に比べて十分小さいと仮定している...))。 | ということになる(($N_{\rm T}\tau$、$N_{\rm T}\tau_0$ 等の $N$と$\tau$の類の積は $1$ に比べて十分小さいと仮定している...))。 | ||
- | |||
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もちろんのことだが部分カウント $n$ ではなく全カウント $N$ の間にも同じ関係が成り立っている。 | もちろんのことだが部分カウント $n$ ではなく全カウント $N$ の間にも同じ関係が成り立っている。 | ||
行 264: | 行 264: | ||
* タイプ 2 (あるいは野村先生型) : \[ n_{\rm T} = \frac{1+N_{\rm in}\tau_0}{1-N_{\rm in}\tau} n_{\rm out} \] | * タイプ 2 (あるいは野村先生型) : \[ n_{\rm T} = \frac{1+N_{\rm in}\tau_0}{1-N_{\rm in}\tau} n_{\rm out} \] | ||
* タイプ 3 (あるいは宇留賀さん型) : \[ n_{\rm T} = \frac{1}{1-N_{\rm in}(\tau_0+\tau)} n_{\rm out} \] | * タイプ 3 (あるいは宇留賀さん型) : \[ n_{\rm T} = \frac{1}{1-N_{\rm in}(\tau_0+\tau)} n_{\rm out} \] | ||
+ | * タイプ 4 (近似なし) : 途中に出てきた \[ N_{\rm T} = \frac{1-\sqrt{1-4N_{\rm in}\tau_0}}{2\tau_0} \] | ||
+ | を使って、\[ n_{\rm T} = \frac{1}{1-N_{\rm T}\tau_0} \frac{1}{1-N_{\rm in}\tau} n_{\rm out} \] とする。2022年10月から採用。 | ||
という計算を行っている。 | という計算を行っている。 | ||
行 271: | 行 273: | ||
単に式の形が形式的に同じということを指摘しているだけ。念のため。)) | 単に式の形が形式的に同じということを指摘しているだけ。念のため。)) | ||
((もうひとつ念の為に書くと、ここまでで $N_{\rm in}$ と書いてきたものは ICR で、$n_{\rm out}$ は補正前の計測値、$n_{\rm T}$ は補正後の値ということになる。))。 | ((もうひとつ念の為に書くと、ここまでで $N_{\rm in}$ と書いてきたものは ICR で、$n_{\rm out}$ は補正前の計測値、$n_{\rm T}$ は補正後の値ということになる。))。 | ||
+ | |||
+ | 実際にデッドタイムが大きい状況で測定して評価した結果から、現在ではタイプ4が選択されている。 | ||
===== - $\tau$、$\tau_0$ を決める ===== | ===== - $\tau$、$\tau_0$ を決める ===== | ||
$\tau$ や $\tau_0$ を決めるのは、$N_{\rm T}$、$N_{\rm in}$、$N_{\rm out}$ のどれか2つを | $\tau$ や $\tau_0$ を決めるのは、$N_{\rm T}$、$N_{\rm in}$、$N_{\rm out}$ のどれか2つを | ||
- | 測定して対応関係のグラフに対して、これまで出てきたどれかの式を使ってフィッティングを行ってパラメータである | + | 測定して描かれる対応関係のグラフに対して、これまで出てきたどれかの式を使ってフィッティングを行ってパラメータである |
$\tau$ や $\tau_0$ を決定するという作業を行うことになる。 | $\tau$ や $\tau_0$ を決定するという作業を行うことになる。 | ||
行 337: | 行 341: | ||
として求まる。 | として求まる。 | ||
- | ===== - 近似の少ない数え落とし補正 ===== | ||
- | |||
- | 実は、7節「$\tau$、$\tau_0$を決める」の内容に近似は入っていない。 | ||
- | 7.1, 7.2 それぞれの議論のスタート地点になっている式(3-1)、(2-1) は近似の無い式で、 | ||
- | 7節の議論の中でも近似は行っていないからである。 | ||
- | |||
- | < | ||
- | < | ||
- | |||
- | 従って7節で求まった$\tau$、$\tau_0$と、近似無し版の式(3-3)すなわち、 | ||
- | <color red>\[ | ||
- | n_{\rm T} = \frac{1}{ 1-N_{\rm T}\tau_0 }\frac{1}{ 1- N_{\rm T}\tau + N_{\rm T}^2 \tau_0 \tau } n_{\rm out} \tag{9-1} | ||
- | \] </ | ||
- | を使えば、実験で得られる計測値$n_{\rm out}$から、真の値 $n_{\rm T}$を求めることができるはずである。 | ||
- | しかし、4節でも述べたように式(9-1)に現れる $N_T$ はこの時点では求まっていない。 | ||
- | そこで、$N_{\rm T}$を消して計算するための5節の議論に近似が含まれている。 | ||
- | |||
- | < | ||
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