tabuchi:dead-time-correction
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tabuchi:dead-time-correction [2022/10/29 04:06] – [2.1 パルスカウント系の入力がすでに他のプロセスを経た後の計測値である場合] mtab | tabuchi:dead-time-correction [2024/06/20 06:34] (現在) – [1.3 少し具体的に] mtab | ||
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行 40: | 行 40: | ||
装置に流れ込んでくるパルスがこの不感時間に当たってしまう確率は | 装置に流れ込んでくるパルスがこの不感時間に当たってしまう確率は | ||
+ | ((実際にはこの式が既に近似。パルスレートがNin)) | ||
\[ | \[ | ||
| | ||
行 66: | 行 67: | ||
の様に真のパルス数 nin を推測することができる。これが数え落とし補正の基本になる。 | の様に真のパルス数 nin を推測することができる。これが数え落とし補正の基本になる。 | ||
+ | <WRAP center 95%> | ||
| | | | ||
- | ^ 全信号 | + | ^ 全信号 |
^ 着目値 | ^ 着目値 | ||
+ | </ | ||
+ | |||
+ | |||
==== - 少し具体的に ==== | ==== - 少し具体的に ==== | ||
行 77: | 行 81: | ||
nout は、計測器が出力として出すパルス数そのもので、 | nout は、計測器が出力として出すパルス数そのもので、 | ||
例えば慣例的に SCA, OCR などと呼ばれる数字などである | 例えば慣例的に SCA, OCR などと呼ばれる数字などである | ||
- | ((本来 | + | ((OCRは output count rate の略。一方 |
数え落とし補正が必要になる出力値が SCA と呼ばれてしまうことがままある。))。 | 数え落とし補正が必要になる出力値が SCA と呼ばれてしまうことがままある。))。 | ||
Nin は装置に流れ込む全パルス数で、例えば ICR(input count rate)などと呼ばれる数字がこれに当たる。 | Nin は装置に流れ込む全パルス数で、例えば ICR(input count rate)などと呼ばれる数字がこれに当たる。 | ||
行 84: | 行 88: | ||
これらの値を使って、 | これらの値を使って、 | ||
\[ | \[ | ||
- | 真のパルスレート = \frac{1}{1-\tau \times {\rm [総入力パルスレート(ICR)]}} {\rm [計測したパルスレート(SCA, | + | |
\] | \] | ||
の様に計算するのが一番素朴な数え落とし補正ということになる。 | の様に計算するのが一番素朴な数え落とし補正ということになる。 | ||
行 111: | 行 115: | ||
の関係がある。 | の関係がある。 | ||
+ | <WRAP center 95%> | ||
| | | | ||
- | ^ 全信号 | + | ^ 全信号 |
^ 着目値 | ^ 着目値 | ||
+ | </ | ||
この表を前段の表と統合すると次のようになる。 | この表を前段の表と統合すると次のようになる。 | ||
+ | <WRAP center 95%> | ||
| | | | ||
- | ^ 全信号 | + | ^ 全信号 |
^ 着目値 | ^ 着目値 | ||
+ | </ | ||
==== - 真のイベント数と、計測値、パルスカウント系の入力値の関係 ==== | ==== - 真のイベント数と、計測値、パルスカウント系の入力値の関係 ==== | ||
ここまでで出てきた (1−NTτ0) や (1−Ninτ) などの因子は、 | ここまでで出てきた (1−NTτ0) や (1−Ninτ) などの因子は、 | ||
- | 真のイベント数、中間状態(パルス計測系に入る前)のパルス数、最終的な計測値を結ぶ係数になっている。 | + | 真のイベント数、中間状態(パルス計測系に入る前)のパルス数、最終的な計測値という3つの量を結ぶ係数になっている。 |
すなわち、 | すなわち、 | ||
- | T⇒in のプロセスでカウントされる確率が pTin=1−NTτ0 であり、 | + | 「T⇒in」のプロセスでカウントされる確率が pTin=1−NTτ0 であり、 |
- | in⇒out のプロセスでカウントされる確率が pinout=1−Ninτ である。 | + | 「in⇒out」のプロセスでカウントされる確率が pinout=1−Ninτ である。 |
+ | |||
+ | |||
+ | |||
+ | <WRAP center 95%> | ||
+ | | | ||
+ | ^ 全信号 | ||
+ | ^ 着目値 | ||
+ | </ | ||
+ | |||
従って、全事象の数 N ではなく、特定のエネルギーでの蛍光等、全体の一部分に相当する事象に関する計測値 n は、 | 従って、全事象の数 N ではなく、特定のエネルギーでの蛍光等、全体の一部分に相当する事象に関する計測値 n は、 | ||
行 137: | 行 154: | ||
& = & ( 1-N_{\rm T}\tau_0 ) ( 1-N_{\rm in}\tau ) n_{\rm T} | & = & ( 1-N_{\rm T}\tau_0 ) ( 1-N_{\rm in}\tau ) n_{\rm T} | ||
\end{eqnarray} | \end{eqnarray} | ||
- | の様に計算できる。ここで、Nin と NT の2つが出てきているが、Nin=pTinNT=(1−NTτ0)NT を使って消去することができて | + | の様に計算できる。 |
+ | |||
+ | ここで、Nin と NT の2つが出てきているが、Nin=pTinNT=(1−NTτ0)NT を使って | ||
\begin{eqnarray} | \begin{eqnarray} | ||
n_{\rm out} & = & ( 1-N_{\rm T}\tau_0 ) ( 1-N_{\rm in}\tau ) n_{\rm T} \\ | n_{\rm out} & = & ( 1-N_{\rm T}\tau_0 ) ( 1-N_{\rm in}\tau ) n_{\rm T} \\ | ||
行 169: | 行 188: | ||
前節では簡単な計算で意味が分かりやすい形になるので Nin を消して、NT を残したが、 | 前節では簡単な計算で意味が分かりやすい形になるので Nin を消して、NT を残したが、 | ||
NT は実際には直接得ることができない。 | NT は実際には直接得ることができない。 | ||
- | そこで逆に NT を消去することを考える。 | + | そこで実測できる Nin を残して逆に NT を消去することを考える。 |
すなわち、式(3-1) Nin=(1−NTτ0)NT を NT に関して解くことになる。 | すなわち、式(3-1) Nin=(1−NTτ0)NT を NT に関して解くことになる。 | ||
解の公式を使えばすぐに | 解の公式を使えばすぐに | ||
行 251: | 行 270: | ||
* タイプ 2 (あるいは野村先生型) : nT=1+Ninτ01−Ninτnout | * タイプ 2 (あるいは野村先生型) : nT=1+Ninτ01−Ninτnout | ||
* タイプ 3 (あるいは宇留賀さん型) : nT=11−Nin(τ0+τ)nout | * タイプ 3 (あるいは宇留賀さん型) : nT=11−Nin(τ0+τ)nout | ||
+ | * タイプ 4 (近似なし) : 途中に出てきた NT=1−√1−4Ninτ02τ0 | ||
+ | を使って、nT=11−NTτ011−Ninτnout とする。2022年10月から採用。 | ||
という計算を行っている。 | という計算を行っている。 | ||
行 257: | 行 278: | ||
「野村先生の考え方で導かれた式」とか「宇留賀さんの考え方で導かれた式」という意味ではなく、 | 「野村先生の考え方で導かれた式」とか「宇留賀さんの考え方で導かれた式」という意味ではなく、 | ||
単に式の形が形式的に同じということを指摘しているだけ。念のため。)) | 単に式の形が形式的に同じということを指摘しているだけ。念のため。)) | ||
- | ((もうひとつ念の為に書くと、ここまでで Nin と書いてきたものは ICR で、nout は補正前の計測値、nT は補正後の値ということになる。))。 | + | ((もうひとつ念の為に書くと、ここまでで Nin と書いてきたものは ICR で、nout は補正前の計測値、nT は補正後の値ということになる。))。\\ |
+ | => 実際にデッドタイムが大きい状況で測定して評価した結果から、現在デフォルトではタイプ4が選択されている。 | ||
===== - τ、τ0 を決める ===== | ===== - τ、τ0 を決める ===== | ||
τ や τ0 を決めるのは、NT、Nin、Nout のどれか2つを | τ や τ0 を決めるのは、NT、Nin、Nout のどれか2つを | ||
- | 測定して対応関係のグラフに対して、これまで出てきたどれかの式を使ってフィッティングを行ってパラメータである | + | 測定して描かれる対応関係のグラフに対して、これまで出てきたどれかの式を使ってフィッティングを行ってパラメータである |
τ や τ0 を決定するという作業を行うことになる。 | τ や τ0 を決定するという作業を行うことになる。 | ||
行 278: | 行 300: | ||
\end{eqnarray} | \end{eqnarray} | ||
と書ける。 | と書ける。 | ||
- | 従って、I0 に対する Nin(いわゆる ICR) のグラフを | + | 従って、I0 に対する Nin(いわゆる ICR) のグラフを二次関数(ただし定数項なし) |
\[ | \[ | ||
| | ||
行 324: | 行 346: | ||
として求まる。 | として求まる。 | ||
- | ===== - 近似の少ない数え落とし補正 ===== | ||
- | |||
- | 実は、7節「τ、τ0を決める」の内容に近似は入っていない。 | ||
- | 7.1, 7.2 それぞれの議論のスタート地点になっている式(3-1)、(2-1) は近似の無い式で、 | ||
- | 7節の議論の中でも近似は行っていないからである。 | ||
- | |||
- | < | ||
- | < | ||
- | |||
- | 従って7節で求まったτ、τ0と、近似無し版の式(3-3)すなわち、 | ||
- | <color red>\[ | ||
- | n_{\rm T} = \frac{1}{ 1-N_{\rm T}\tau_0 }\frac{1}{ 1- N_{\rm T}\tau + N_{\rm T}^2 \tau_0 \tau } n_{\rm out} \tag{9-1} | ||
- | \] </ | ||
- | を使えば、実験で得られる計測値noutから、真の値 nTを求めることができるはずである。 | ||
- | しかし、4節でも述べたように式(9-1)に現れる NT はこの時点では求まっていない。 | ||
- | そこで、NTを消して計算するための5節の議論に近似が含まれている。 | ||
- | |||
- | < | ||
- | </ | ||
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